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富山地方裁判所 昭和24年(行)15号 判決

原告

栂野景喜

被告

富山県知事

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

請求の趣旨

原告は被告が原告に対し昭和二十四年七月二十七日附富山縣指令計第一、一二〇号を以て許可した別紙目録記載地域の敷地占用権を有することを確認する訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求めた。

事実

原告は被告に対し昭和二十四年七月二十七日附都市計画法施行令第十一條による申請書を提出し被告は之に対し同年七月三十日附富山県指令計第一、一二〇号を以て別紙目録記載の河川敷地占用並びに工作物築造の件を許可したので原告は右許可に係る河川敷地内に同年八月二日より同月末日迄の間に木造仮設店舖建坪三十六坪の工作物を築造し竣工間近かにあるところ被告は突如同年九月十三日附富山県達第百二十九号の戒告書を以て原告の築造に係る右工作物を同月十六日迄に除却すべき旨の通告を発し同戒告書は同月十四日原告に送達されたが右通告は行政代執行法第三條第一項により相当の履行期限を定めて為すべきであるに拘らず被告は之を無視し不法にも前後僅かに四日間の短時日を以て之が除却を強要したのであるが之は明らかに法定の猶予期間を無視した処置である仮りに被告の右戒告手続が適法であるとしても原告に対する河川敷地の占用権に関する許可を取消さずして為されたこと自体が違法であるから原告は毫も右命令に応ずる義務がない然るに被告は昭和二十四年九月十七日附富山県達第百三十号代執行令書を以て代執行期日代執行責任者の氏名及び費用見積額に付通知を発し原告は右通知を翌十八日受領したのである。依つて原告は係争工作物即ち建造物の保全を期する為め別途に被告の違法処分に因る執行処分を未然に防止する為め執行停止の申請を為すと共に茲に被告に対し昭和二十四年七月二十七日附富山県指令計第一、一二〇号を以て許可した別紙目録記載地域の敷地占用権の確認を求むる為本訴請求に及んだ次第であると陳述し立証として甲第一号乃至第三号証を提出し乙号各証の成立を認めた。

被告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め答弁として原告の主張事実中(原告が訴外小田勇次の受任者として)被告に対し都市計画法施行令第十一條による申請書が提出された事実、被告はこれに対して富山県指令計第一、一二〇号を以て工作物築造のみを許可した事実、原告が本件河川敷地内に昭和二十四年八月二日より同年同月末日迄の間に原告主張の如き工作物を築造した事実、被告は同年九月十三日附富山県達第百二十九号の戒告書を以て原告の築造に係る工作物を原告主張期日迄に除却すべき旨の通知を発し該戒告書は原告主張の日に原告に送達された事実被告は同年九月十七日附富山県達第百三十号代執行令書を以て原告に対しその主張の如き通知を発し原告は翌十八日之を受領した事実は之を認めるがその他の事実は全部否認する。被告に対する都市計画法施行令第十一條による申請者の申請人は原告でなく原告は単に訴外小田勇次の受任者として申請書を提出したのである。元来河川の敷地を占用しようとする者は河川法第十八條に従い地方行政庁の許可を受けることを要し原告は未だ嘗て本件河川敷地に関し許可願を提出したことなく従つて被告は原告に対し河川敷地占用を許可したこともない。原告は昭和二十四年七月三十日附富山県指令計第一、一二〇号を以て河川敷地占用の許可を受けたと主張するけれどもこの指令に依る許可は都市計画法施行令第十一條による申請に対する許可であつて河川法に基く申請に対し許可を与えたものではない。富山県指令計第一、一二〇号を以て為された指令の本文に昭和二十四年七月二十七日附申請富山復興都市計画土地区劃整理地区内に於て工作物築造の件條件を附して許可するとあるに徴しても明かな通り此の指令は単に工作物築造の件を許可したに止まり河川敷地の占用を許可したものではない。尤も本件河川敷地に付いては訴外小田勇次より昭和二十三等八月二十四日被告に対し使用期間を一個年として自転車置場に使用する為めその占用並びに工作物施設の許可願が提出され被告は同年九月二十九日附富山県指令河第六五四号を以て右訴外人に対し之を許可したところ原告は原告主張の都市計画法施行令第十一條による申請書を提出するに当り訴外人小田勇次に対する右河川敷地占用許可指令書の写及び右訴外人の委任状を添附してその受任者として申請したものである。従つてこの都市計画法施行令第十一條による申請に対し河川敷地占用の許可があり得ないことは明らかであり更に右訴外人に対する占用許可と重複して原告に対し本件河川敷地の占用を許可されたとの主張は矛盾も甚しい要するに被告は原告に対し河川法に基く河川敷地の占用を許可したことはないから占用権の確認を求める原告の本訴請求は失当であつて応ずることはできないと述べ立証として乙第一号証の一、二、三、乙第二乃至第五号証を提出し甲号各証の成立を認めた。

理由

原告より原告主張の日時被告に対し都市計画法施行令第十一條による申請を爲し被告は之に対し富山縣指令計第一、一二〇号を以て工作物築造のみを許可したこと、原告が本件河川敷地内に原告主張の日時迄の間に原告主張の如き工作物を築造したこと被告は原告主張の日時その主張の如き戒告書を以て右工作物を除却すべき旨の通知を爲したこと及び被告は原告主張の日時代執行令書を以て原告に対しその主張の如き通知を爲したことは当事者間に爭がない。仍て原告が河川法に基き縣知事の許可を得て適法に本件河川敷地占用権を取得したか否かに付考究するに河川敷地占用権は河川法に基く地方行政廳の許可をその成立の要件としておることは同法第十八條の規定に依り明らかであるが成立に爭がない甲第二号証に依れば原告は被告より昭和二十四年七月三十日富山縣指令計第一、一二〇号を以て富山復興都市計画土地区画整理施行のため工作物の移轉除却若しくはその他の変更を指示したときは直ちにその指示に從うこと、この場合に要する費用その他の損害に対しては補償を求めることができない。建築法規に基く許可認可届出等の手続については別に之をなさなければならない旨の條件を附して富山復興都市計画土地区画整理地区内に於て工作物築造の件を許可されたことは一應認め得るけれども右許可は本件河川敷地が富山復興都市計画土地区画整理地区の境域内に在る爲め都市計画法施行令第十一條に基く所定地域内に於ける工作物築造の許可を與えたに過ぎないことは甲第二号証中の申請書に徴しても明白であり同條に依り河川法に基く河川敷地の占用をも許可したものでないことは言を俟たないところであり原告が本件河川敷地の占用に付いて河川法第十八條に基き富山縣知事である被告の許可を受けたことは之を認め得べき何等の証拠がないのみならず却つて成立に爭のない乙第一号証の一、二、三、乙第三乃至第五号証を綜合すれば原告に対し本件河川敷地の占用に付いて河川法に基く地方行政廳の許可がなかつたものであることを推認するに難くない。從つて原告の被告に対する河川敷地占用権存在の確認を求める本訴請求は理由なく失当として之を棄却すべきものである。

仍て訴訟費用の負担に付いて民事訴訟法第八十九條を適用し主文の通り判決する。

別紙目録省略

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